紛争の内容
浪費を原因として約780万円の負債がある人が破産の申立てを行い、この人物の免責調査を行うために、裁判所から破産管財人に選任されました。
交渉・調停・訴訟等の経過
破産者は、約10年前から、登山用品等のを1回につき数万円から十数万円の金額で、月1回以上の頻度で購入していました。約6年間の間に、約500万円をこれらの買い物等のために費消し、それでも足りないためにクレジットカードを使用しました。その結果、約780万円の負債ができ、返済不能となりました。
他方、破産者は、弁護士に依頼をした後、家計簿をつけて毎月貯金ができるような生活を行いました。また、過去の浪費の原因が家庭内の不和にあったと分析し、家庭の外で悩みを相談できる人物を見つけて交流を行う等、再び借金を作らないようにする方法を検討していました。
本事例の結末
破産管財人として、破産者には破産法252条1項4号の浪費による免責不許可事由があるという意見を出しました。
他方、再び借金を作らないで済むような生活ができているため、経済的な再出発のために、破産法252条2項に基づく裁量免責を認めるのが相当である旨の意見を出しました。その結果、裁判所は免責を認めました。
本事例に学ぶこと
破産手続は、破産者の経済的な再生を目的としていますので、免責が不許可になるというのは悪質なケースに限られます。
そのため、免責不許可事由があってもその悪質性を検討し、また、破産者が家計簿をつけて借金を作らずに生活できているか、借金ができた原因を分析できているか等を確認し、破産者の経済的再生を認めるべき場合には、裁量免責を認めるのが相当です。
本件では明らかな浪費がありましたので、免責を不許可とする意見を出す余地もありましたが、免責不許可となった別の裁判例のケースに比べますと負債の金額が少ないために悪質性は少なく、また、負債を作らずに生活できている様子を確認しますと、裁量免責を認めることが相当であると考えました。
このように、本件では、明らかな免責不許可事由がある場合の免責を判断する方法を学ぶことができました。
弁護士 村本 拓哉