紛争の内容
依頼者は個人事業主であるフリーのカメラマンであるところ、新型コロナウイルス感染症の拡大により、従前の業務が激減してしまい、借金を重ねて生活を回していました。

しかし、収入減少が止まらず、借金返済の目途がたたなくなってしまったため、破産の方法を決意されるに至りました。

交渉・調停・訴訟等の経過
まず依頼者は、どこかに事務所を構えているわけでもなく、売掛金や買掛金があるわけでもないし、従業員も雇っているわけでもないため、雇われカメラマンとそれほど大きく変わらない形態であることが分かりました。

そして、仕事内容を変化させていっている最中で、売上が順調に伸びているところでした。

そこで、現状のまま破産手続・免責手続を申し立てることにしました。

本事例の結末
借金の理由が生活苦にあること、仕事の方向性を変化させることで生活が安定していること、という点から、個人事業主を継続させることができ、免責決定を得ることができました。

本事例に学ぶこと
破産法では以下のように規定がなされています。

破産法36条

破産手続開始の決定がされた後であっても、破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することができる。

そのため、破産管財人が裁判所の許可を受けることが、事業継続の前提となっています。

しかし、破産者に資産がなく(換価しても二束三文のものであったり、仕事に不可欠な什器備品等は一定の範囲で破産財団には含まれずに換価処分されるものではありません)、売掛金や買掛金もなく、個人事業のための事務所を借りているというわけでもなければ、債権者に配当するためのお金を作り出すことはできません。

本件もそのような事情を踏まえて、個人事業の継続を認めてもらえたものと思われます。

弁護士 平栗 丈嗣