紛争の内容
免責不許可事由のある債務者の破産申立事件
交渉・調停・訴訟などの経過
本債務者は、他県所在の企業の取締役を務めていましたが、病気退職をしました。
退職金も底をつき、住宅ローン付きの自宅を売却し、ローンを完済しましたが、妻子とは別居し、近県の実家で生活することになりました。
病気治療を続けながら、アルバイトなどで生計を立てていましたが、カード利用や、中古の高級外車のローン購入、ゴルフへの過度なのめりこみなどで、多重債務となりました。
実父が亡くなり、相続人は、母、実妹と債務者の三人でしたが、債務者が父の自宅マンションを取得しました。
しかし、上記多重債務の負担もあり、相続したマンションを売却し、債務の弁済に充てました。
また、実父の死亡後に、父名義のクレジットカードを利用して、キャッシングなどを行っていたことも判明しました。
債務者は、仮想通貨取引にも興味があり、インターネットを通じて、情報収集を行い、複数の仮想通貨取引業者を通じて、売買を重ねました。
大きく資産を形成したときには、現実通貨での払戻を受け、ゴルフ、友人・知人へのプレゼント購入など、度を過ぎたお金の使い方をしていました。
当時、同居していた息子が、父である債務者の様子が不自然とのことで、病院に緊急入院することなりました。
入院治療を受け、病状も落ち着いたときに、妻子からも説得され、債務整理をすることになり、当事務所を訪れました。
弁護士費用の工面は、夫の対応につかれた妻が、これ以上付き合いきれないので、弁護士費用の不足分は負担するが、離婚に応じてほしいと切り出し、協議離婚をしました。
当事務所が依頼を受け、申立て準備中に、父名義のカードの利用残高について、相続人全員を相手取って、訴訟が提起されました。債務者の実妹から相談を受け、訴状添付の利用履歴から、カード名義人の死亡後の利用が明らかであること、被相続人の長男が同カードの利用を認めていること等を記した答弁書を提出するよう促しました。
一式資料を整え、裁判所に申し立てました。
本事例の結末
面先調査型の管財手続事件となりました。
病気療養中であることから、自由財産拡張を満額申請し、認められました。
なお、仮想通貨取引の残高分が現金化する最小単位以下であったので、その評価額相当は減額し、換価不能の仮想通貨残高は手元に保持することになりました。
本事例に学ぶこと
消費者の方が自己破産するのは、その過大な支払義務の免除を裁判所に許可してもらうためです。浪費などの免責不許可事由があっても、過去の消費行動を反省し、堅実な家計を実現することを示すことで裁判所の裁量により、免責許可を獲得できることがあります。
当事務所の担当弁護士のアドバイスに従い、堅実な家計を実現している姿を示すことで、より一層支払義務の免除の許可を得られやすくなります。
ご遠慮なく、ご相談ください。二人三脚で裁量免責を勝ち取りましょう。
弁護士 榎本誉