紛争の内容

依頼者は、過去に車をローン購入したことがありましたが、完済しておりました。6年ほど前、交際相手と結婚するにあたり、さいたま市内に転居し、その際の引越し費用をキャッシングで用意したのが本件負債の増大のきっかけとなった借入です。
その後、結婚式披露宴の費用150万円を銀行ローンで用立て、さらに、中古の外車をローン購入しました。
ご夫妻は共働きで、手取り月収が併せて50万円以上ありましたので、ローン負担は苦ではなかったとのことです。
結婚して数年後、配偶者の方が、看護師を目指し、看護学校に通うことになりました。
配偶者の方は、学資ローンを組みました。
看護学生をしながら、アルバイトをして10万円位を稼いでいたので、ローン返済は可能であったとのことです。
同居生活において、配偶者の生活態度が気に入らず、いさかいが生じ始めたとのことです。妻が実家に戻ることがあり、勢いで、もう帰ってこなくてよいと述べてしまったことから、夫婦関係の破綻は決定的になり、別居生活となり、年末には離婚することになったそうです。
離婚に当たっては、結婚式・披露宴のために借りた銀行のローンの残債務を半額負担してもらい、その他の財産分与、慰謝料の請求はお互いにしないことにしたとのことです。
配偶者の収入がなくなったため、依頼者の収入だけで、返済しなければならなくなりました。
依頼者は、離婚後、やはり、自分自身の収入だけでは返済を賄えず、借り増しをしました。
更には、勤務先が吸収されて、給与体系が変わりました。
元の勤務先の給与体系を引き継ぐという条件でしたが、最後の年にはボーナスがなかったために、引き継がれた会社でもボーナスは出ず、前年の年収を年棒にして12回分割で支払われるという給与体系となりました。
また、前勤務先では、副業が許されており、アルバイトをして月額5~10万円の収入を得ることができましたが、アルバイトはできず、収入は減り、返済に窮し、借り増しに頼らざるを得ない生活になったとのことです。
依頼者の仕事は、終電以降に仕事が終わることもあり、電車代の通勤手当が出ていましたが、自家用車で通勤しなければならず、ガソリン代、高速代の負担も大きいようでした。
依頼者は、当事務所に相談・依頼する前に、銀行のおまとめローンを利用して、月額負担を軽くしようとしましたが、ローン審査に通りませんでした。しかし、追加融資が可能として、さらに借り増しをしてしましました。
依頼者は、継続的安定的な収入があったため、家計をやりくりして、負債額を大幅に圧縮して、返済する個人再生手続きの利用を考え、毎月の家計の状況をチェックしていきました。
男性の一人暮らし、深夜の帰宅時間、自炊による食費の節約にも限度があること、また、引越しして以降、ペットを買い続けていたこと、二人暮らしをするための住居を転居して、住居費を削減したいところですが、引越しをする費用も用立てられず、現在の勤務先の厳しい査定の中では、収入の増加も見込めず、継続的な返済を確立することができませんでした。方針を破産に変更せざるをえませんでした。

本事例の結末

上記の事情をまとめ、破産申立をしました。依頼者の誠実な対応もあって、申立て準備書類に不備はなく、また、裁判所から追加の報告も求められず、書面審理で破産手続開始決定、破産手続の同時廃止の決定が出ました。なお、裁判所の指示により、免責許可決定まで家計の状況の報告を求められましたが、これも堅実にこなしました。めでたく、免責許可を受けました。

本事例に学ぶこと

弁護士に債務整理を委任し、債権者に受任通知を発すると、新たな借り入れはできません。本依頼者は、節約のため、家族用賃貸住宅から単身者用賃貸住宅に転居して、住居費の節約を図りたかったのですが、引越し費用を借り入れることができず、また、ボーナス支給のない勤務先(給与体系)となったために、引越しもできませんでした。
その中で、堅実にやりくりしてもらいましたが、やはり、家計の余剰は形成できませんでした。
しかし、堅実な生活ぶりは、当事務所依頼以降の家計の状況を全部報告することで、速やかな破産手続開始決定、免責許可を受けられました。
債務者の方には、まずは、借りたものは返すとの方針で、誠実な債務者としての最大限の努力を示すことにより、より確実に免責許可の恩恵に浴することが可能となります。
多重債務に苦しんでいる方が経済的更生を図るためにも、当事務所のご相談・ご依頼ください。

弁護士 榎本誉