紛争の内容

飲食店を居抜きで前経営者から譲受けたのち、さらに、別の飲食店事業も居抜きで乗り出したが、承継した飲食店の売り上げが上がらないまま、新型コロナウィルス禍により、売り上げが激減し、廃業をした事例

交渉・調停・訴訟などの経過

・破産者は、飲食店従業員(料理人)であったところ、居抜きで主に夜間営業の飲食店を引き継ぎ、経営していたが、事業拡大を目指し、昼間営業の飲食店を居抜きで取得し、多店舗展開をしたようです。
・昼間営業の飲食店が来客見込み数が想定の3分の1程度であったことから、黒字化を実現できず、公共納屋管飲食店の売り上げで維持していたところ、新型コロナウィルス禍により、夜間営業店の来客数も激減し、収束の見込みが立たず、廃業を決意し、破産申立に至りました。
・裕福な親族の援助を受けてもいましたが、申立て準備中に、実父が死去し、相続が発生しました。
・申立人は、家庭裁判所で相続放棄手続きをとりました。
・実父は遺言信託をし、申立人に、葬儀費用に充てられたいとして、相応の金員を信託しました。この金員は、実父の相続財産に含まれません。申立人は、受益権を放棄はせず、同金員を実父の葬儀費用に全部を費消しました。
・その後の、破産申立です。
・破産者は、無事再就職を果たしており、通勤用自動車(7年以上経過、5万円相当)、その他の預金、保険を自由財産拡張申立てを行い、相当として許可を受けました。なお、名義貸しをしていた投資信託解約金の預金されている銀行口座については、拡張対象の希望はされず、財団に組み入れられました。
・信託遺言者の突然の死亡が、申立て準備中の破産者に生じたものであり、受益者として取得した同金員は、破産者の責任財産を構成しますが、これを亡父の遺志のとおり、葬儀費用に費消したことは、財産の不当な漏出にあたらないかと問題になりました。
・管財人としては、その使途として、全額が葬儀費用に費消されていること、金額も不相当と評価できないことなどから、不相当ではないと意見しました。破産裁判所も特に疑義はありませんでした。
・配当に回せるほどの財産は形成されず、異時廃止となりました。

本事例の結末

・破産手続は異時廃止、免責を許可されました。

弁護士 榎本誉