紛争の内容
本件法人は、飲食店のフランチャイジーとして飲食店の営業を行っていました。本件法人の代表者は、詐欺被害に遭い、会社資金を騙し取られてしまい、多額の負債を抱えるに至りました。さらに、2020年春からの新型コロナウイルス感染症問題を受け、売上高が激減し、借入金の返済をすることができず、会社資金がショートするに至りました。
交渉・調停・訴訟などの経過
本件法人が破産手続申立をするに至った原因は、新型コロナウイルス感染症問題による売上高の減少のみならず、法人代表者が詐欺被害に遭ったことで法人の借入金が増大し、その返済をすることができなくなったことにあります。
詐欺の被害に遭ったとはいえ、会社の資金を代表者個人の私的事柄のために流用したことになるため、法人の借入金の連帯保証にであった代表者個人についての免責は認められないおそれがありました。
特に、法人に対する最大の債権者は、本件法人のフランチャイザーであり、同社が本件法人及び代表者の破産手続申立に対し、どのような意見を述べてくるのかが問題となりました。
もっとも、法人代表者の方は、破産手続申立準備にあたり、積極的に誠実に対応をし、詐欺被害についても熱心に警察の捜査に協力をしていただくことができました。
破産管財人面談でも丁寧に質問への回答をしました。破産管財人も、法人代表者に落ち度があったことの非難は避けられないにしても、朴訥な代表者の態度・それまでの準備への努力を認め、免責意見を書いても良いと言っていただくに至りました。
次に、本件破産手続申立をするにあたり、大きな障壁となったのが、労働債権の確定作業、すなわち元従業員に対する解雇予告手当の計算でした。本件法人の代表者は、給与計算ソフトを使用して、各従業員に対する給与の計算をしていました。しかし、弊所にご依頼いただいた際には、一部データが欠けてしまっていました。そこで、賃金台帳等を基にして、一人一人丁寧に再計算することになりました。
本事例の結末
最終的に、破産財団では租税債権等の財団債権の一部を支払うことしかできず、一般債権者への配当はできず、異時廃止となりました。また、本件法人のフランチャイザーから、法人の代表者を免責しても良いとの意見を提出していただき、法人代表者個人についても異時廃止となり、懸案事項であった免責決定を受けることができました。
本事例に学ぶこと
本件では、従業員へ支払うべき解雇予告手当の計算をするにあたり、重要な資料が欠けてしまっており、依頼いただいてから裁判所に破産手続申立をするまで、3ヶ月以上かかってしまいました。
弊所では、常にスピードを意識した申立を行っていますが、重要な資料が欠けてしまっている場合にはどうしても申立に時間がかかってしまいます。本件もそのようなもどかしさを痛感した事案でした。