紛争の内容
競売手続き中の自宅不動産を有する破産者の管財人に選任されるとともに、同申立債権者に対し、任意売却への協力、成約の暁には相応の財団組入れを打診。厳しい条件付きであるが、協力を取り付けました。
この時点では、競売手続きの執行裁判所から売却基準価格は出ておりませんでした。
債権者の評価額は、1800万円余。よって、希望売り出し価格は、2000万円以上によられたいとのことでした。申立債権者においては、本年1月の、新型コロナウィルス禍の深刻化以前の社内評価額を下回ることは応じられないからといいます。
破産手続開始決定の官報公告を確認して連絡をくれた複数不動産会社に、1800万円以上の買受希望ないし査定を依頼したところ、自社買取を予定する不動産業者からの、室内内見希望がありました。
自宅に単身居住する破産者の理解協力を取り付け、内見立会い後、1700万円の買い取り額の提示を得ました。
その後まもなく、売却基準価格1200万円弱とされたこともあり、上記業者の1700万円の買付証明書、配当案を示して、申立債権者に対して、任意売却への協力を求めました。
しかし、来る債権者集会の1カ月余り後には、改札期日が指定され、上記買受希望業者が入札するならば、配当表記載以上の弁済を受けられると見込んだためか、社内評価額上記1800万円余を超え得ないため、応じることはできないと回答がありました。
よって、上記の事情を報告し、当不動産については、当財団から放棄することの許可申請をし、破産裁判所から放棄の許可を得ました。
また、本件不動産に付された火災保険金については、住宅ローン会社は質権などを設定していなかったことから、破産手続開始決定時の解約返戻金額相当額を破産財団に組み入れてもらい、当財団の換価業務は終了としました。
破産手続は配当に回す余裕もないとして、異時廃止となり、当該破産者には免責不許可事由がなく、免責相当との意見で終結となりました。
本事例に学ぶこと
本件競売物件の任意売却については、良い購入希望者があり、悪くない買受申し出額でしたが、申立債権者の承諾を得られませんでした。これが得られていれば、他の債権者にも配当が可能であった事案でした。