事案の概要
知人から、業績につながるので借入用のカードを作ってほしい、その後、すぐに解約するという話があり、それを信用して借入用のカードを作成し知人に渡した、そうしたところ、知人が同カードを用いて多額の借入れを行った、借入先から返済を求める訴訟を提起され、経緯を説明したが返済義務を免れることはできなかった、知人との間では返済分は知人が負担するという合意をしたが知人が生活保護状態となり返済が滞ったため、破産手続の申立てを行ったという事案について破産管財人に選任されました。
主な管財業務の内容
知人との合意に基づく回収が可能か、また、破産に至る経過に免責不許可事由がないかというところの検討が主たる管財業務の内容となりました。
前者について知人に連絡を取ったところ、知人から破産手続申立ての依頼を受けたという弁護士から、知人は現在も生活保護受給中であること、破産手続申立て準備中であることの回答がありました。それらを示す資料を確認することができたため、知人からの回収は不能という判断をしました。
後者について確かに借入用カードを渡したこと自体は不用意であるといわざるを得ないもののその後に実際に借入れを行い、また、借入金を費消したのは知人であるため、本人の免責不許可事由に該当するとまではいえないと判断しました。
本事例の結末
知人に対する返還請求権については回収見込みなしとして放棄許可申立てをしました。その他破産者にめぼしい財産は存在しなかったため、初回の債権者集会において破産手続は異時廃止となりました。
免責手続に関しては破産者の行動には問題があるが免責不許可事由には該当しないとの意見を述べたところ、後日、裁判所から免責許可決定が下されました。
本事例に学ぶこと
当然のことではありますが、知人から依頼されたとしても自分名義の借入用のカードをそのまま渡してしまうことは止めるべきです。
他人がそのカードで借入れをしたとしても返済を求められるのは契約者である自分であるため、そのことを十分に理解した上で行動すべきということになります。
弁護士 吉田 竜二