事案の概要
破産者は建築関係の個人事業主として稼働していたが、怪我に悩まされ仕事ができない時期に負債を抱え、怪我が回復した後もその支払いに追われ結果的に破産手続申立てをせざるを得ない状況となったという事案について破産管財人に選任されました。
主な管財業務の内容
破産者は個人事業主ということで仕事に使う什器類を所有していましたがいずれも経年劣化のため交換価値は大きくなく、主たる管財業務は免責調査となりました。
破産者は怪我で働けない期間の生活費を捻出するため、クレジットカードで金製品を購入し、それをすぐに買取店に持ち込んで現金化するという行為を繰り返していました。
当該行為はいわゆるクレジットカードの現金化を行っていたものとして免責不許可事由に該当すると判断しました。
本事例の結末
破産者の負債を抱えた経過については上記のとおり免責不許可事由が存在するとしましたが、破産者はその後、個人事業から得る収入の範囲で生活をすることができており、今回が初回の破産手続申立てであること等の事情を総合的に考慮し、今回に限り裁量免責相当との意見を裁判所に提出しました。
当該意見を受けた裁判所からは追って免責許可決定が出されました。
本事例に学ぶこと
個人事業主時代に抱えた負債で破産手続に至るケースは珍しくないですが、そのまま同一の個人事業を継続するケースは稀です。
今回の破産者が従事していた業務では仕入れという概念が存在しなかったため(注文者が材料等をすべて供給する方式)、破産手続申立てを決めた後も個人事業を継続することができましたが、仕入れを要する業務では掛けで仕入れをすることができなくなりますので通常は業務を継続することができなくなります。
また、負債の原因となった個人事業は一般的には収益性が見込めないという側面がありますので、個人事業を継続したまま破産手続申立てを行うことは困難である場合が多いです。
弁護士 吉田竜二