紛争の内容
本破産者は、平成16年に出身地の裁判所で破産して以来の二度目の破産です。
交通事故の被害者でもあり、損害賠償請求訴訟を東京地裁で係属中の方でした。
交渉・調停・訴訟などの経過
破産者を原告とする、損害賠償請求訴訟は、破産手続開始決定を受けて、当然に中断されました。
当該訴訟経過、被告加害者の支払い能力を聴取すると、任意保険未加入、不定期収入の方で、相当額の賠償金負担義務を早期に果たすことは不可能と見受けられましたので、当該損害賠償請求権を破産財団から放棄する方向で検討しておりましたところ、破産者の契約する保険会社への人身傷害保険特約に基づく保険金請求権があることが判明しました。
同請求権の対応について、裁判所に意見を述べ、裁判所と協議をし、同請求権の内、破産者の自由財産拡張を認め、その余については、財団を構成することとしました。
訴訟請求事件については、早期相当額の回収見込みが立たず、同請求権を放棄することの許可を裁判所から得ました。
相当額の配当財団が形成されましたので、簡易な手続きで配当を行い、破産手続は終結しました。
二度目の破産ですが、7年以上は経過していること、堅実な生活ぶりがある中、交通事故被害に遭い、収入が途絶したものでありましたので、免責不許可事由はないとの意見を出しました。
本事例の結末
免責は許可されました。
なお、破産管財人が請求権を放棄し、破産者に帰属したことからは、破産者は東京地裁で低額の長期分割の支払条件で和解したとの報告がありました。
弁護士 榎本誉