紛争の内容
さいたま地方裁判所より連絡があり、個人債務者の管財人として弊所の弁護士が選ばれました。
担当することとなった事案は、子の奨学金の保証債務や生活費や浪費に基づく債務がある方の事案でした。
ポイントとしては、①貯金がそれなりにありましたので、自由財産拡張(簡単に言うと、破産するけれども手元に残せる財産を増やしてもらうこと)が認められるかどうか、②浪費による債務もそれなりにありましたので、免責許可すべきかどうか、という二点でした。
交渉・調停・訴訟などの経過
管財人としては、まずは、申立人である債務者の方とその代理人である弁護士の方との面談を実施しました。面談では、債務者の過去や現在における経済歴を中心に詳しく聞き取りを行いました。また、さいたま地方裁判所において定められている管財予納金である20万円(事案によって、管財人の業務の多寡、内容により、増額される場合もあります)を、債務者から破産管財人の口座に予納していただきました。
管財人は、債務者宛の郵便物を転送で受け取る仕組みとなっておりますので、債務者宛の郵便物の中から、申告していない財産がないか等を調査します。
その後、2~3ヵ月後に設定される債権者集会に登壇する流れです。
本事例の結末
本件では、特段の問題が浮上することはなく、①についても運用基準の範囲内であり、②についても強く免責不許可と求めるほどの事情はありませんでしたので、諸事情を考慮し、①については拡張を認める方向、②については裁量免責を相当とする方向で、それぞれ意見を裁判所に伝えました。なお、これらの決定をするのは、裁判所ですので、管財人はあくまでも意見を述べることに止まります。
結果、破産手続は終了し、裁判所より免責許可決定が出されました。
本事例に学ぶこと
①自由財産拡張については、各地方裁判所単位で、運用が異なります。少し不公平にも思えますが、原則として拡張を認めない(例外事情による)という運用をする裁判所もあれば、さいたま地方裁判所のように緩やかに認め、破産者の経済的更生を促す裁判所もあります(総額99万円の枠内であれば、預貯金・保険解約返戻金等が20万円を超える場合であっても、拡張を認めることは少なくありません)。
②免責についての意見ですが、これは、破産法に基づく免責不許可事由に該当するかどうかをまず判断します。法律要件ですから、例え1円でも無駄遣いやギャンブルに費消していたからといって、必ずしも要件に当たるとは限りませんが、破産者の生活状況、収入、債務の額、借入理由や使途等により個別に判断します。実際に、免責不許可事由にあたると考えた場合、次に、裁量免責が相当か否かを考えます。つまり、免責不許可事由(本来、免責をしてあげるべきではない借入れである)に該当したとしても、裁判所の裁量で免責にしてあげることが相当かどうかを考えます。例えば、多額の浪費やギャンブル等がある場合には、難しい判断に迫られることになります。
ご自分が破産により免責される可能性があるかどうか気になる方は、お気軽にグリーンリーフ法律事務所までご相談下さい。管財経験豊富な弁護士も多数在籍しております。
弁護士 時田剛志