自己破産のQ&A

自己破産についてよくお寄せられるご質問にお答えしております。

自己破産FAQ

Q01.過去に破産をして免責を受けているのですが、今回さらに、破産をして免責を受けることができますか。
以前に免責許可決定が確定した日から7年以内に、再度、免責許可の申立をした場合には、再度の免責を受けることはできません。7年を超えていれば、再度の免責を得ることができますが、現在の裁判所の運用として、そのような場合は、破産管財人をつけているようです。
Q02.破産手続を取った場合でも、給料差押などをされることがあるのですか。

債権者は、貸金請求の訴訟を起こして支払いを命じる判決をもらったり、また、お金を貸すときに公正証書を作っている場合は、その公正証書をもとに、債務者の財産を差押えることができます。給料債権も債務者の財産ですから、差押えをすることができます。
ただし、差押えができるのは破産開始決定までで、破産開始決定が出た後は、差押えをすることはできません。
給料の差押えをするのは、債権者の中でも一部だけですが、差押えがされそうなときは、早く破産開始決定をもらえるように、手続を早く進める必要があります。

Q03.免責はどのような場合に不許可になるのでしょうか。

免責が不許可になるのは次のような場合です。

①  破産者が、財産を隠したり、債権者の不利益になるような形で財産を処分したとき。
②  浪費や賭け事をし、その程度がひどいとき。
③  債権者を騙してお金を借りたとき。
④  その他、破産法に定める一定の事由があるとき。

このような事情がある場合でも、裁量免責といって、裁判官の裁量で免責許可決定をしてくれることもありますが、そのような場合には、破産管財人をつけて破産者の生活態度が改まったかを調査したり(破産管財人を付ける場合は、裁判所に対して、20万円程度のお金を予納することが必要になります)、あるいは毎月一定額のお金を積み立てて、債権者に配当するなどのことが必要になります。

Q04.免責許可決定を受けると、借金がゼロになるのですか。

免責許可決定を受けることができると、下記のような債権を除いて、支払い義務が免除されます(借金がゼロになります)。

【免責されない債権】
■  破産者が知っていて債権者名簿に記載しなかった請求権
※  したがって、すべての債権について免責を得るために、債権者名簿には、すべての債権者を載せることが必要です。

■  破産者が、悪意を持って加えて不法行為にもとづく請求権

■  子供の養育費などの家族法上の請求権

■  租税

■  その他、破産法が定める債権

Q05.破産は、破産者の財産をお金に換え、債権者に配当する手続と聞きましたが、裁判所の破産開始決定後に稼いだものについても、債権者に対する配当の対象になってしまうのでしょうか。

確かに、破産は、破産者の財産を換価し、債権者に配当する手続ですが、基準となるのは、破産開始決定の時です。つまり、破産開始決定の時に存在する財産をお金に換え、破産開始決定の時に存在する債権者に配当する手続です。したがって、破産開始決定後に、働いて溜めた財産は、債権者に対する配当の対象にはならず、破産者が自由に使ってよいということになります。

Q06.債権者の中に親族がいるのですが、弁護士に破産の手続を依頼した後、この親族に対して返済をすることができますか。

破産をすると決めた以上、一部の債権者にだけ返済をすることはできません。なぜなら、破産というのは、破産者の財産をお金に換えて、全債権者に平等に配当する手続ですから、一部の債権者に対してだけ支払いをすることは、いわゆる偏頗弁済となり許されないからです。

たとえば、
①  経済的に困っているのを見かねて親族がお金を貸してくれたので、その親族には返済をしたい、
②  親族が保証人になっている債権がある、この親族には迷惑をかけたくないので、その債権について支払いをしたい、
③  取立てのきびしい債権者がいるので、この債権者に対しては支払いをしてしまいたい、

というような事情がある場合でも、破産をすると決めた以上、全債権者を平等に扱わなければならないのですから、返済をすることは、破産法上許されません。

Q07.保証人がついている債権があるのですが、債務者が破産をした場合、保証人の責任はどうなりますか。

債務者が破産をしても、保証人の責任には何ら影響がなく、保証人は債務者の債務を支払わなければなりません。したがって、債務者が破産をすれば、債権者は保証人に対して請求をすることになります。
保証人にも支払能力がない場合は、保証人も、破産、個人再生などの手続をとることを考える必要があります。

Q08.弁護士費用を、消費者金融などから借りても構いませんか。

弁護士費用を、消費者金融などから借りれば、詐欺罪ということにもなりかねません(事情を話して親族から借りるということならかまいません)。なぜなら、債権者に対する返済をすることができないと考えたからこそ、弁護士に破産の手続を依頼するのであり、そのための費用を消費者金融などから借りるということは、返すことができないことを承知で借りたということになるからです。

Q09.弁護士費用の分割払いできない場合、破産の手続を取ることはできないのでしょうか。

日本司法支援センター(いわゆる「法テラス」)というところで、法律扶助を受けることができれば、あなたに代わって、法テラスが弁護士に対し、弁護士費用を支払ってくれます。ただし、これは一時的に立替払いをしてくれるということですから、ご自身で法テラスに対して、毎月1万円ずつ、立て替えてもらった弁護士費用の返済をしなければなりません。

生活保護を受けている方の場合、この1万円の返済を免除してくれることもあるようですが、そうでない限り、毎月1万円を返済しなければならず、たとえば無職で、この1万円の返済もできないという場合は、法律扶助を受けることは困難になります。
法律扶助を受けるためには、法律事務所に法律相談に行き、そこから法テラスに申し込みをしてもらうか、あるいは直接、法テラスに法律相談に行って申込みをするか、のどちらかの方法をとることになります。

Q10.弁護士費用を分割払いすることはできるのでしょうか。

破産の場合、弁護士が債権者に対して受任通知を出すと、(とくに債権者が消費者金融の場合は)債権者からの督促は止まります。
また、弁護士が受任をした時点で、債権者に対する支払いもストップします。
このように、支払いをストップするのですから、これまで債権者に対する支払いに充てていた分を、弁護士費用の分割払いに充てることが可能になります(ただし、サラリーマンの方ではなく、事業を行っている方の場合、破産をする時点で事業をストップしてしまうことが多いですから、収入の道がなくなり、分割払いは難しいことが多いと思います)。
実際にも、多くの法律事務所が弁護士費用の分割払いを行っていると思います。

Q11.破産申立をする場合の費用と、免責までの期間について教えて下さい。

弁護士費用については、このホームページの弁護士費用のコーナーをご参照下さい。裁判所に納める費用としては、破産管財人がつかない場合は約2万円、破産管財人がつく場合は、20万円程度の費用がかかります(裁判所によっても異なります)。
期間としては、これも裁判所によって異なりますが、破産申立をしてから免責許可決定が出るまで、破産管財人がつかない場合は4ヶ月~6ヶ月位、破産管財人がつく場合は、破産管財人が破産者の財産を換価するスピードにもよりが、さらに数ヶ月程度余計にかかるというような感じではないでしょうか。

Q12.弁護士がつくと債権者からの督促が止まるのですか。

金融庁のガイドラインでは、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、または、調停、破産、その他の裁判手続を取ったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払い請求をする」ことを禁じています。
したがって、弁護士に依頼をし、弁護士から債権者に対して、依頼を受けた旨の通知が行くと、ヤミ金などの無免許な違法業者は別として、消費者金融、その他の債権者からの督促は止まるのです。

弁護士に依頼しなくても、破産などの法的手続をとり(つまり、裁判所に対して破産申立を行い)、その旨を債権者に通知すれば、督促は止まりますが、破産申立をするのには時間がかかりますから、弁護士に依頼する場合に比べ、督促が止まるまでの時間に差がでてきます。

Q13.どのような場合に、破産管財人がつくことになるのですか。

裁判所によっても違うのですが、さいたま地方裁判所の場合、次のようになっています。

(1)  破産者が、個人の場合
①現金、②預貯金、③退職金(仮に今、退職したとしたら出る金額の8分の1の額)、④貸付金・売掛金、⑤積立金、⑥保険解約返戻金、⑦手形などの有価証券、⑧自動車・バイク、⑨相続財産(遺産分割未了の場合)、⑩事業設備・在庫品・什器備品、⑪過払金など破産管財人の調査によっては回収可能な財産、について、①~⑪の各項目がすべて20万円未満の場合は同時廃止。
各項目の中に、1つでも20万円以上となる項目がある時は、破産管財人を付ける。
ただし、20万円以上となる項目があっても、20万円以上となる項目の合計が50万円未満の場合は、事情によっては同時廃止とすることがある。
 また、この基準とは別に、自営業である、浪費が激しいなどの事情がある場合に、破産管財人がつくことがあります。

(2)  破産者が、法人、その代表者の場合
法人の破産については、破産管財人をつける。法人の代表者についても、原則として破産管財人をつける。
破産管財人がつく場合、20万円(裁判所によっても金額は違います)を裁判所に予納しなければなりません。この20万円は分割で納付することも可能です。

Q14.破産手続の具体的な流れについて教えて下さい。

裁判所に破産を申し立てる場合、弁護士を代理人にするのが通常ですので、その場合の流れについてお話します。

①  まず、法律事務所に法律相談に行き、方針が自己破産と決まったら、次回の打合せ日を決めます。

②  打合せ日に、債権者一覧表、カード、三文判、弁護士費用(一括あるいは分割)などを持っていき、弁護士に依頼をするとともに、今後そろえる必要書類などについて打合せをします。
弁護士は依頼を受けた後、消費者金融などの債権者に対して受任通知を郵送などで送ります。この受任通知を出すことによって、債権者からの督促は止まり、以後は債権者に対する支払いをせずに、破産手続によって債権を処理することになります。

③  破産申立書を裁判所に提出します。

④  裁判所で、裁判官が破産申立人と面接します(裁判所によっては、この面接をしないこともあります)。このときは弁護士も同行します。
 とくに問題がないようなら、裁判官が破産開始決定をします。
 また、破産管財人を付けるかどうかも、このときに裁判官が決定します。

⑤  破産管財人が付けば、破産管財人が破産者の財産を換価して(お金に換えて)、債権者に配当する手続を取って行きます。配当が終了した後に、免責手続に移行します。
 破産管財人がつかない場合は、破産開始決定と同時に、破産手続は終了し(同時廃止といいます)、免責手続に移行します。

⑥  免責不許可事由がないかどうか、裁判所で、裁判官が破産者と面接をします(個々の面接ではなく、集団面接と言って、1人の裁判官と大勢の破産者がいっぺんに面接することもあります)。弁護士も同行します。

⑦  債権者から異議がなければ、裁判官が免責許可決定をします(異議がある場合は、その異議に理由があるかどうかを裁判官が判断しますが、ほとんどの場合、理由なしとして免責許可決定がされます)。

 弁護士がつかない場合は、ご自分で破産申立書を作成した上、③以下の手続を行っていくことになります。

Q15.破産をした場合、どのような不利益があるのでしょうか。

破産をしても、戸籍や住民票に破産者であることが記載されることはありませんし、選挙権、被選挙権もなくなりません。
破産管財人がついた場合は、旅行などをするときに裁判所の許可を得る必要がありますが、海外旅行の場合でも、裁判所は比較的簡単に許可をしてくれます。破産管財人がつかない場合は、このような制限もありません。

また、破産管財人がついた場合は、破産者宛ての葉書、手紙などは、まず破産管財人のところに行きますが、これは破産管財人が把握していない破産者の財産がないかをチェックするためですので、破産管財人に言えば、すぐに葉書、手紙を渡してくれます。破産管財人がつかない場合は、このような制限もありません。
破産をすると、官報という国が発行する新聞に、破産者の氏名などが載りますが、官報をチェックしている人はほとんどいないでしょうから、破産をしたことが知られることはまずありません。破産をしたことによって、たとえば子供の就職や結婚に支障が出るということもありません。万一、勤務先の会社に破産したことが分かったとしても、会社は、労働法上、破産した従業員を解雇することができません。

破産をしたことによって生じる不利益としては、いくつかの資格制限があります。たとえば、一般に関係ありそうなものとしては、破産をして免責になるまでの間のことですが、警備員、生命保険募集人になることができないという制限があります。その他の資格制限としては、宅地建物取引主任者、会社の取締役、公証人、弁護士などになれないなどがありますが、一般にはあまり関係がないと言ってよいでしょう。

Q16.裁判所はどのような場合に、破産開始決定をしてくれるのですか。

あなたが支払不能の状態にあることが必要です。支払不能というのは、あなたの資産、収入から見て、今後、あなたが借金を支払っていくことは不可能であると考えられる状態を言います。

ごく一般論として言えば、消費者金融からの借金の総額が300万円を超えているような場合は、支払不能に近いと考えてよいのではないでしょうか(もちろん、個々人の収入によって違ってきますが)。ただし、老齢や病気で働くことが難しいような場合は、100万円程度の借金でも支払不能と考えられます。

Q17.借金の返済ができないので、自己破産を考えています。自己破産とはどのような制度なのでしょうか。

一口に破産といいますが、正確に言うと、破産手続と免責手続に分かれます。
破産手続とは、裁判所が選任した破産管財人が、破産者の財産をお金に換え、破産者の債権者に公平に配当する手続です。

ただし、破産者の財産が少ない場合は、同時廃止と言って、破産管財人を選任せず、破産開始決定と同時に、破産手続を終了させてしまいます。実際には、破産者の財産が少なく、破産管財人が選任されない場合の方が多いです。
この破産手続の後に、免責手続が行われます。免責手続というのは、破産法が定めた免責不許可事由がない限り、裁判所が免責許可決定を行い、破産者の借金をゼロにしてくれるものです。

Q18.取引先が地震による打撃で債務超過に陥りました。取引先の本社は埼玉なので、その不動産を処分して支払をしてもらいたいのですが、債権者の立場で破産申立をすることは可能ですか。

特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律には、破産手続に関する特別の規定が設けられています。

同法では、著しく異常かつ激甚な災害であって、当該非常災害により債務超過(その財産をもって債務を完済することができない状態)となった法人の存立等に資するための措置が特に必要なものが発生したときは、この災害を特定非常災害として政令で指定するとされていますが、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震も特定非常災害として指定されています。

特定非常災害の指定がなされると、この災害によって債務超過に陥った法人について、政令で定める一定期限(今回は平成25年3月10日)まで、原則として、破産手続開始決定をすることができなくなります(同法5条1項本文)。
特定非常災害により債務超過となった法人の存立を図ることが目的です。

この場合、裁判所は破産手続開始の申立てに対して、その開始を留保する決定をしなければなりません(同条2項)。
当該決定に対して不服を申し立てることはできませんが(同条4項)、当該法人が支払不能(債務者が支払能力を欠くため、その債務のうち弁済期にあるものにつき一般的かつ継続的に弁済することができない状態)になるなど、留保決定をすべき事情に変更があったときは、申立て又は裁判所の職権により留保決定を取り消すことができます(同条3項)。

なお、この定めは債務超過に陥った法人を念頭においた規定なので、債務者が支払不能に陥った場合、債務者が個人である場合、債務超過に陥った法人自身が清算中である場合、自ら破産手続きの申立てをした場合(自己破産)には適用されません(同条1項但書参照)。

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