いきなり、「債権差押命令」と書かれたら書類が届いた場合、どう対応したらいいのかお困りの方もおられるかと思います。
また、「借金を返せなくなった場合、預金が差し押さえられてしまうの?」、「給与が差し押さえられてしまうの?」といった不安を持たれる方がおられるかと思います。
本ページは、債権差押命令が届いた場合どうなるのか、どのように対応すべきか等につい
て専門家が解説するページになっております。
そもそも、債権差押命令とは?
債権者が、借金などの返済を求め、裁判所から債務名義(確定判決、仮執行宣言付支払督促など)を獲得したにも関わらず、債務者が支払いに応じなかった場合に、債権者が債務者に対する債権を回収するため、債務名義に基づき、債務者が第三債務者(差し押さえるべき債務者が抱える債務者)に対して有する債権を強制的に取り立てることを、「債権差押命令」と言います。
差押えの対象となる債権は、個人の場合は、給与債権や預貯金などがあります。
法人の場合は、売掛債権や貸与金債権などが差押えの対象になります。
債権差押命令の効力は?
債権差押命令の効果として、以下のようなものがあります。
・債務者が第三債務者に対して取立行為をすることが禁止される
・差押対象となる債権を第三者へ譲渡することが禁止される
・第三債務者から債務者への弁済が禁止される
簡潔に説明しますと、銀行から預貯金を引き出したり、勤務先から給与を満額受け取ることができなくなるケースがあるということです。
また、債務者が他人にお金を貸していて、この貸金債権が差し押さえの対象となった場合、債務者は、この債権を自ら取り立てることが出来ないだけでなく、他人に譲渡することもできなくなってしまいます。
それほど、債権差押命令は強い効力を持っております。
債権差押命令後の流れについて
裁判所が債権差押命令を出した後の流れについてご説明いたします。
裁判所が債権差押命令を発令
↓約1週間程度
第三債務者(例えば、銀行や勤務先)に債権差押命令正本が送達される
↓
裁判所が債務者に債権差押命令正本を送付
※第三債務者よりも先に債務者へ債権差押命令正本が送達されてしまうと、債務者によって預貯金の処分・隠匿をされ、債権者の利益が害されてしまうおそれがあるためこれを防ぐ目的。
↓
債権差押え
債務者に債権差押命令が送達された日の翌日から4週間後に、債権者は債権差押をすることができます。
このように、債権差押命令が発令されてから、実際に債権差押えが行われるまでの期間はとても短いです。
給与は全額差し押さえられてしまうのか?
法律上、給与差押えの場合、差押額の上限があり、所得税、住民税等や社会保険料を控除した残額である「毎月の手取額の4分の1」までと決まっています。(民事執行法152条1項2号)
もっとも、手取り額が44万円を超えている場合、33万円を超えた部分について差し押さえられてしまいます。
(例)
給与(手取り額)30万円→差押額 7万5000円
給与(手取り額)50万→差押額 17万円
また、給与差押えの最中に、賞与(ボーナス)が支給される場合や、退職金が支給された場合、賞与や退職金も差押えの対象となります。
そして、給与差押えは、原則、債権者の債権が完済されるまで、ずっと続くことになります。
さらに、給与が自分名義の預貯金口座に入ったその瞬間、給与債権ではなく預貯金債権に変わります。
この場合、後ほどご説明しますが、預貯金債権の場合、差押額の上限がない(もっとも、口座残高が差押債権額よりも多い場合には、差押債権額の限度で差し押さえられます)ため、タイミング次第では、給与日直後に預貯金の差押えがなされ、給与全額が差し押さえられてしまう可能性があります。
預貯金は全額差し押さえられてしまうのか?
銀行の預貯金口座が差押えの対象となっている場合、給与債権に対する差押えのような制限がないため、その時に口座に入っている預貯金全額が差し押さえられてしまいます。
もっとも、口座残高が差押債権額よりも多い場合には、差押債権額の限度で差し押さえられます。
また、預貯金口座に対する差押えでは、特定の銀行に対して債権差押命令が送達された日時点の口座残高が差押えの対象となります。
したがって、その日に口座に入っていた預貯金は、自由に出金することができなくなりますが、後日口座に入金された現金は自由に引き出すことができます。
言い換えると、預貯金口座の差押えは1回限りのもので、その後も自由に口座を利用することが可能です。
しかしながら、債権者は同じ口座に対し、何回も差し押さえることが可能であります。
債権差押命令の取り下げは可能か?
以下のような場合、債権差押命令を取り下げることが可能とされています。
・債務者が任意弁済をしたとき
・債権者と債務者との間で示談が成立した時
・差押債権が存在しなかったとき
・取立てが困難又は取立てが出来る見込みがないとき
・債権者の都合により差し押さえを継続する必要がなくなったとき
したがって、債権者に債権差押命令の申立てを取り下げてもらうようお願いするだけでは足りず、借金を一括で返済する、任意整理するなど、債権者との交渉が必要となります。
もっとも、自分だけで債権者との交渉をすることは現実的に難しいケースが多いです。
弁護士に依頼して債務整理を検討してみる
債権差押命令が送達された後、自己破産(借金の支払い義務を免責してもらう手続)や個人再生(借金の額を一定の範囲で減縮してもらう手続)といった裁判上の手続をすることにより、債権差押命令を停止させることができます。
正確には、個人破産手続開始決定(再生手続開始決定)が出された時点で新たな差し押さえができなくなります。
ですので、債権差押えをいち早く止めるためにも弁護士に、自己破産又は個人再生について相談・依頼をしてみるのがよろしいかと思われます。
まとめ
以上、債権差押命令の効力がいかに強度なものであるか、債権差押命令を受けた時の対処についてご説明いたしました。
万が一、差押えが行われてしまうと、今後の生活に大きく影響し、生活を営むためにまた借り入れをしてしまうといった負の連鎖につながる危険性があります。
このような事態からいち早く抜け出すためにも、弁護士に相談し、債務整理(個人破産・個人再生)の手続をするよう依頼することをオススメします。
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