こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。
新型コロナウイルスが流行してから久しいですが、コロナという未曽有の危機によって、生活が激変してしまった人も多いのではないでしょうか。
特に、コロナのせいで仕事が減ったり、仕事を続けることができなくなってしまった方々においては、日々の生活を続けるだけでも大変だったのではないかと思います。
そのような生活状況では、住宅を購入するために借り入れていた住宅ローンや、事業を行うための事業ローンの返済をする余裕がなくなってしまうことが考えられます。
では、コロナのせいで毎月のローンの返済が出来なくなってしまった場合に、返済を軽減する方法方はないのでしょうか。
この記事では、コロナの感染症の影響で失業したり、収入が減ったりするなどして、返済ができなくなってしまった個人や個人事業主に向けて、自然災害債務整理ガイドラインの「新型コロナ特則」を利用した債務整理の方法を、わかりやすく解説していきます。
「自然災害債務整理ガイドライン」の「新型コロナ特則」とは
「自然災害債務整理ガイドライン」とは、大地震といった自然災害の被害に遭われた被災者の生活や事業の再建を後押しするために、民間の自主的なルールとして作られた債務整理に関する指針(ガイドライン)です。
自然災害は、いつどこで起こるか分からないうえ、誰もが被災者となり得るものです。
それにもかかわらず、自然災害の影響で、住宅ローン等を借りている個人や事業性ローンを借りている個人事業主が、既存の債務を抱えたままでは、その自然災害を乗り越えて再スタート切ることが難しくなってしまいます。
そのような個人や個人事業主を救済するため、住宅ローン、住宅リフォームローン、事業性ローン等の既往債務を返済できなくなった個人の債務者を対象として、破産などの法的倒産手続によらずに、債権者と債務者の合意に基づき、債務整理を行う際の準則として取りまとめられたものが「自然災害債務整理ガイドライン」(正式名称:「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」)なのです。
本ガイドラインは、令和2年12月から、自然災害の被災者だけでなく、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて返済が出来なくなった方にも、適用されることとなりました(「新型コロナ特則」)。
「新型コロナ特則」が利用できる人とは
この手続きを利用できる債務者は、以下の要件をすべて満たす人を対象としています。
⑴ 新型コロナ感染症の影響により、収入や売り上げが減少したこと。
⑵ 弁済について誠実であり、その財産状況を債権者にきちんと開示していること。
⑶ 基準日(令和2年2月1日)よりも前に、対象債務について、返済が滞るなどして期限の利益を喪失していないこと。
⑷ この手続きを利用した場合に、破産手続きなどを行った場合と同等額以上の債権回収の見込みがあるなど、債権者にとっても、経済的な合理性があること。
⑸ 個人事業主の場合には、その事業に事業価値があり、債権者の支援により再建の可能性があること。
⑹ 反社会勢力でなく、そのおそれもないこと。
⑺ ギャンブルや、一部の債権者に対する不公平な返済など、破産法で免責不許可事由といわれる事情がないこと。
「新型コロナ特則」の対象債務とは
「新型コロナ特則」が対象とする債務の範囲は、住宅ローン、カードローン、キャッシングなど銀行等の金融機関、貸金業者、クレジット会社、リース会社などからの借り入れなどです。
また、次の条件に該当する必要もあります。
⑴ 令和2年2月1日前から負担していた債務であること
⑵ 令和2年2月2日から同年10月30日までに負担した債務の場合には、借り入れの主な目的が、新型コロナ感染症の影響による減収や売上げ等の減少に対応するためであったこと
なお、令和2年10月31日以降に借り入れた債務は、原則として、「新型コロナ特則」の対象とならないので、注意が必要です。
「新型コロナ特則」の3つのメリット
「新型コロナ特則」を利用して債務整理を行った場合、主なメリットが3つあります。
⑴ 手続支援が無料で受けられること
「新型コロナ特則」を利用した債務整理を行うには、まず、債務者から最も多額のローンを借り入れている金融機関に、特則の手続への着手希望を申し入れます。
金融機関から手続着手についての同意が得られれば、次に、その「着手同意書」を地元の弁護士会(埼玉県であれば、埼玉弁護士会)などに提出し、「登録支援専門家」による手続支援を依頼します。
その後、担当となった「登録支援専門家」(弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士)が、債務整理ガイドラインに沿った流れで、手続きを進めることになります。
「新型コロナ特則」を申し入れた債務者は、弁護士などの「登録支援専門家」による支援を無料で受けることができます。
⑵ 財産の一部を手元に残せること
債務者の生活状況などの個別事情にもよりますが、預貯金などの財産の一部を「自由財産」として手元に残すことが出来ます。
また、住宅ローンの返済を継続する条件で、住宅を残す弁済計画とすることも可能です。
⑶ ブラックリストに載らないこと
自己破産や個人再生などの債務整理と異なり、「新型コロナ特則」を利用した債務整理では、「債務整理が成立」した場合に、個人信用情報(いわゆる「ブラックリスト」)に登録されません。
したがって、その後の新たな借り入れにも影響はありません。
もっとも、「債務整理が成立した」場合にブラックリストに登録されないのであり、「新型コロナ特則」の申し入れをしたことで個人情報に登録されないわけではないので、この点はご注意ください。
まとめ
以上、「新型コロナ特則」を利用した債務整理の方法について、解説しました。
対象範囲については細かく決められていますので、ご自身が本特則を利用して債務整理を行うことができるのかについては、入念に検討する必要があります。
仮に、本特則が利用できない場合でも、破産や個人再生の手続きを取った場合が良いと弁護士が判断する可能性もありますので、返済にお困りの際には、まずはお近くの弁護士に相談することをおすすめします。
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