事案の内容

依頼者は、過去に自己破産をしたことがありました。新型コロナウイルス感染症拡大により、配偶者の収入が激減し、生活費を借り入れることで生活をしながらも限界を迎え、弊所に自己破産の依頼をするに至りました。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)

依頼者は、慣れないながらも、協力的に家計簿を作成したり、書類の収集をしていただけたり、順調に手続の準備をしていくことができました。しかし、申立てが近くなってから、弁護士に黙って、銀行口座を開設していたり、自身が破産手続を取るにもかかわらず身内に経済的援助をしていたり、という事実が明らかになりました。幸いにも、依頼者は後ろめたさを感じながらも弁護士に打ち明けてくれたため、申立前に全ての事情が明らかになりました。そこで、詳細な事実関係を聴き取り、申立書とは別に詳細な報告書を作成しました。
さらに、依頼者からこれまでの詳細な流れを聴き取り、依頼者が浪費など不適切な事情により借金をして返済が不可能となってしまったわけではないことを、申立書とは別に詳細な上申書で報告することとしました。
もっとも、依頼者は2回目の破産手続を取ることになり、管財事件となる可能性が濃厚でした。しかし、諦めることなく、上記のとおり詳細な報告書・同時廃止手続とすることが相当と考える上申書を作成して、裁判所に破産手続開始申立を行いました。

本事例の結末

2度目の破産であったにもかかわらず、同時廃止となり、破産管財人に対する予納金20万円を支払うことを免れ、債権者集会に出頭することも免れ、最終的に免責決定を得るに至りました。

本事例に学ぶこと

管財見込みの事案であっても、詳細に丁寧に誠実に裁判所に対して情報提供をすれば、裁判所は破産管財人の調査を絶対不可欠とまでは考えません。時間をかけて詳細に聴き取り、丁寧に密度の高い報告書を作成することは労力を要しますが、本件のように同時廃止とすることが認められた場合には、努力した甲斐があるところです。あまり期待することは良くないですが、諦めることなく申立ての努力をすることで、努力が奏功して管財事案が同時廃止事案へと変貌を遂げることがあることを改めて実感した事案です。

弁護士 平栗 丈嗣