紛争の内容
依頼者は、十数年前に一度破産をしていました。免責決定を受け、いったんは落ち着いた生活を取り戻すことができました。しかし、その後、ライフステージが変化して子どもへの学費が増加していくなか、東日本大震災のよる余波を受けて住居確保に苦慮し、何度も怪我や病気に見舞われてしまい、金融機関からの借入を受けて何とか生活をしてきました。しかし、大病を患い、仕事を失うに至ってしまいました。そのため、借入金の返済をすることができなくなり、弊所へ破産手続申立ての相談にいらっしゃいました。
交渉・調停・訴訟などの経過
相談にいらっしゃった際、依頼者は仕事を失い、失業手当でどうにか生活をしている状況でした。このままでは、借入金の返済がなくなっても、家賃の支払いなどの生活をすることすら困難な状況でした。そのような状況では、仮に破産して免責決定が出ても、結局は破産前同様の生活に戻ってしまうことに繋がり、抜本的な解決には繋がりません。そこで、家賃の安い物件への引越、家計の見直しをしていただくことで、一応の黒字が出る家計としていただきました。
その後、弁護士費用の分割支払いも終わり、裁判所に破産手続開始の申立てを行いました。二度目の破産であり、非常に高い確率で破産管財人が就くことになり、予納金として別途20万円を支払うことが強く予想されました。そこで、申立てにあたり、なぜ依頼者が二度目の破産に至ってしまったのか、現在に至るまでの依頼者の経緯・依頼者が借入金を返済できなくなってしまったやむを得ない事情・申立て準備期間の生活改善による今後の依頼者の生活の見通し等、丁寧に厚く論じた大部の上申書を裁判所に提出し、破産管財事件とせずに同時廃止決定を得られるよう、強く意見を上申しました。
本事例の結末
最終的に、管財事件とはならず、同時廃止決定が出ることになりました。そのため、破産管財予納金20万円の支払いを免れ、通院等に不可欠な自動車の売却をすることも免れ、短期間での免責許可決定が出ることになりました。
本事例に学ぶこと
2度目の破産となると、破産管財人が就くことが通常です。しかし、弁護士の指示により依頼者(債務者)が生活環境を改善して今後の安定した見通しを整え、破産手続にいたる経緯を丁寧に聞き取った上で、丁寧に厚く上申書で管財事件としないよう強く主張していったことが功を奏した事例です。
2度目の破産だからといって諦めず、可能性が低いながらも、懸命に管財事件を回避する努力をすることで、本件のような依頼者にとって非常に有益な結果を得られることもあります。