紛争の内容
1 支払停止後、退職金(50万円弱)全額費消、実母の死亡保険(200万円余)の不明朗な使途の調査をメインとする、破産管財事件。
交渉・調停・訴訟などの経過
1 前管財人調査、2回目の集会前に、顧問先が債権者にあることが判明。辞任。
2 2回目の集会後、引継ぎ。
3 管財人面接により、再調査の依頼。再婚家庭での家計の状況提出うながす。
4 家計の余裕はなく、裁量免責のための、財団組入れ断念。
5 嗜好品である趣味性の強いアクセサリー類の換価不能。放棄。
6 自筆反省文の作成指示。
本事例の結末
1 免責調査
(1) 多額の保険金の責任財産の流出については「詐害目的での財産の不利益処分」として、免責不許可事由該当。
(2) 多額の保険金での必需品以外の購入は、「浪費」として、免責不許可事由に該当。
(3) 破産申立と同時に免責許可申立てをする関係で、申立て時に記載しなかった点を「虚偽の債権者名簿の提出」にあたるかについては、消極(否定)。手続き詐害の目的なし。未記載は、非免責債権として処遇されるため。
(4) 裁量免責相当。
反省していること、家計の改善・堅実さを認める。体調不良の中、就労継続していること,管財人への協力が顕著であること,債権者から異議が認められないことを総合して、経済的更生のため、裁量免責。
本事例に学ぶこと
1 申立代理人として、財産保全の義務違反に問われかねない事案。
2 多額(200万円以上の保険金)は、代理人預かりとすべきであった。
3 精神的な不安定さからの浪費の問題については、代理人における早期の指導がなされるべき。
4 管財人の指摘に素直に従うよう、代理人としては指導する。
5 債権者記載漏れについては、十分な注意を要する。
弁護士 榎本誉