紛争の内容
もと勤務先から1000万円余を横領し、その他600万円弱の負債を抱えて破産した債務者の破産管財事件
横領財産の使途の解明、手残りの財産の発見の可否、免責についての調査を踏まえた意見。
交渉・調停・訴訟などの経過
1 就任打診時は、もと勤務先からの訴訟係属中。破産手続開始決定時には、破産者全面的敗訴の判決。控訴せず、確定。
2 管財人面接時に、横領内容の再確認。間違いないとのこと。
3 経理担当者という地位と、被害額の多額さから、刑事事件となれば、一発実刑となりかねないことを説明した。なお、この時点では、不起訴処分となっていたことを知らなかった。
4 使途の補充聞き取りを行う。あわせて、代理人からの調査報告を求める。
5 手続き期間中は、隠匿財産の有無、使途の内容の調査を行い、家計の管理を監督する。
6 債権者集会においては、上記の調査の進捗状況を説明。
7 もと勤務先代理人から、民事訴訟提起前に勤務先会社単独での被害申告からの横領事案は、被害分析が甘く、刑事事件としては、不起訴となったことを知る。
8 破産者のもと勤務先金属後から、現在までの生活関係の再聞き取りをしたところ、破産者の休職中機関、配偶者の病気休職期間の無収入期間のあることが判明、その間の生活費の使途として、横領金が充てられていたことを突き止める。無職期間の収入状況調査のために、代理人には、銀行からの取引明細提出を促す。
9 元同僚からの誘いに断り切れなかったネットワークビジネス系の商品の多額多数購入なども判明し、手残り家電類の専門業者への買取打診をするも、送料倒れになることが判明し、財団形成に至らず。
10 管財人の調査も、手段が付き、また、破産者財産隠匿はないことを宣明している点も踏まえ、免責調査意見を述べる。免責不許可事由(浪費)はあるも、残さん隠匿は発見できず、該当しないと判断せざるを得ないとし、再出発のため、裁判所の裁量による免責が相当と意見。
11 破産手続は異時廃止。免責については裁量免責。
本事例の結末
隠匿財産の存在は判明せず、家計の改善がみられることから、裁量免責意見のとおりの裁判所の判断となる。
本事例に学ぶこと
企業の経理担当従業員の横領行為は、刑法上の犯罪であり、厳罰に処せられます。
他方、その民事上の損害賠償義務は、仮に面積の許可を受けてもその効果を受けられない、非免責債権に該当します。
本件では、もと勤務先は、債務名義を有し、本件破産手続資料を閲覧謄写すれば、破産者の現在の勤務先が判明します。
破産者は、もと勤務先に謝罪に遺志を有しますが、分割返済をしていく示談を交わすか、川瀬ない場合、債務名義に基づいて、復権した破産者の給与の差押がなされることが予想されます。
破産し、免責の許可を受けても、すべてが容赦されるものではないことは忘れてはいけません。
弁護士 榎本誉