紛争の内容
未分割の遺産不動産を有する破産者の管財事件
交渉・調停・訴訟などの経過
1 裁判所から、遺産分割未了の遺産不動産(東北地方の山村部の所在する実家の土地建物及び農地)を有する申立人の管財事件の配転打診、申立人は、固定資産評価証明書のみであり、不動産業者の査定書取得できないと申告している事案。換価の可能性を諮ってほしいとのこと。
2 遺産不動産所有地の町役場のホームページを閲覧すると、「田舎暮らし」を案内する部署があること、売り物件情報を掲載していることが判明したため、同町役場に問い合わせをしたところ、地元不動産業者の紹介を受ける。
3 紹介を受けた不動産業者に無料査定をお願いし、快諾を得、不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書を送付し、査定書を発行してもらった。なお、同不動産業者によると、町のホームページ掲載物件についての問い合わせが数件あるも、今年(8月時点で)は成約事例0件とのことであった。
4 官報公告を見た不動産業者にも、机上査定を依頼し、複数査定を得た。
5 管財人面接時に、破産者より、他の相続人との共同売却は管財人の希望に添えないとし、破産者持分相当額を兄弟の援助を受けて、財団組入れをしたいと要望があった。
6 地元業者査定を踏まえ、上記方針を裁判所に打診し、了解を得て、破産者から、破産者持分(相続分)相当額の財団組入れをしてもらうとともに、同不動産共有持分全部の財団からの放棄をした。
7 免責については、裁量免責相当と意見した。
本事例の結末
財団組入れあるも、費用不足による異時廃止となり、破産者は裁量により免責を許可された。
本事例に学ぶこと
遺産分割未了のまま、破産申立を行う場合には、管財事件となることは避けられない。
地元不動産業者の評価を前提に、現実的な査定額をもとに、財団組入れ額等を算出し、破産者の親族などの協力を得て、財団組入れしてもらうのが一般。
弁護士 榎本誉